『解体屋外伝』(いとうせいこう)を読みました。【洗脳小説】

ナンパに役立つかな?と思って、いとうせいこうさんの1993年の小説『解体屋外伝』を読んでみました。

この小説は、『ワールズ・エンド・ガーデン』の中に出てくる登場人物である解体屋を主人公にした外伝という位置づけの作品なのですが、「言語による洗脳」をテーマとしているということで、興味を持ち、Amazonで購入してみました。

ストーリーは、「洗濯屋(ウォッシャー)」と呼ばれる洗脳集団に精神を壊されて廃人にされてしまった主人公の「解体屋(デプログラマー)」が、意識を取り戻し、自分を壊した敵に復讐するというものです。

香山リカ氏によるあとがきでも書かれていますが、この小説は、オウム真理教による地下鉄サリン事件(1995年)よりも前に書かれたものということです。

精神洞窟(ニューロティック・ケイヴ)、自己洗脳(セルフ・ウォッシュ)、意味細菌(ミーニング・ウィルス)とか、言葉がいちいちカッコいいです。合間に挟まれる軽いタッチのギャグが、ちょっとついていけなかったりしますが、これまた合間に挟まれる「言語による洗脳」に関する記述が興味深いため、一気に読むことができました。

解体屋の助手を務める少年の科白、「暗示の外に出ろ。俺たちには未来がある。」なんて、最高にカッコいいと思いました。

戦いの描写は、まさにサイバーパンクです。デプログラマーである解体屋は、自己を「戦闘者(ハッカー)」「操作者(マニピュレータ)」「マザーコンピュータ」と3つに分割させます。サイバーパンク独特のこういった記述は、フロイトの局所論からの影響なのでしょうか。

この小説の主人公は、「言語」です。

我々は、言語空間を生きています。思考も感性もイメージも、すべて言語を通じて行われます。言語を通じてしか、世界を捉えることができないのです。自分の軸となる言語空間を構築し、言語を上手く操ることができなければ、我々は、簡単に他人に洗脳されてしまうでしょう。現代は言語を介した洗脳戦争なのです。

そして、インターネットの発展でそれはより顕著になったように思います。インターネットの空間は、基本的に言語でできているからです。言語空間さえ支配することができれば、相手のゲシュタルトに介入して、相手の思考を操ることもできてしまうでしょう。それは、ナンパや恋愛活動においても同じなのです。

以下、痺れた科白を一部紹介。

「質問には質問を。相手の心理道路(サイ・ウェイ)には乗るな」

「解体屋になりたいなら、そろそろそんな甘い感情を捨てろ。この世界に悪いもいいもない。洗うか外すか。それだけだ。価値基準(セントラル・ドグマ)なんかドブに流しちまえ。あるのは価値作用(セントラル・ウイル)だけでいい。作用だ。力の働きだ。システムではなく、その中を動くエネルギーの方向だけを考えろ。洗われてるなら外すんだ。そして、俺たちを洗おうとするなら、洗い返せ。俺たちに必要なのは、その意志だけだ。」(一部略)

「俺たちはいつでも暗示を操作する側に回り込まなきゃならないんだ。操作される側に足をとどめたら終わりなんだよ。暗示を与えられたら、その瞬間から徹底的に自己操作しろ。たとえ相手が神だったとしても、だ。」


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本書は長らく絶版でしたが、現在は「いとうせいこうレトロスペクティブシリーズ」として復刊されています。興味を持たれた方は、是非一読を。

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